我々の冷たい幻想

とても愛し合っている夫婦が一緒に僧籍に入るという仏教説話がある。
彼らは修行を積み、やがて悟りを得たとき、夫が妻に「私は誰よりも自分を愛していることを知った」と語り、妻も夫に「我が夫よ、私も今それを知ったところだ」と微笑んだ、という話。

ぬる風呂:連作小説(7)『ソフトウェア』
少しだけ幸せだった。
玄関のドアを静かに開け、俺はそっと歩いた。誰かのためにそっと歩いたり、優しく物を置いたりするのは好きだ。俺は、下方に穴が開いていないかくまなく探した。うん、今日は大丈夫。

僕らが愛しているのはいつも自分の中に棲む幻に対してかもしれない。
尤も、全世界は脳で再構成された幻なのだけれど。
とても悲しいセックス。滑稽なセックス。幻想のセックス。
僕はこの小説が好きだな。胸が痛んで。
出口はバカバカしいほど近くにあるのに、それから目をそむけて自分を罰する男。

2 thoughts on “我々の冷たい幻想

  1. 7/4の(ここで奥さんが一言「小さいこと言っちゃイカン。もう忘れたって言いな」だすて)
    への自己RESもしくは照れ隠しか?と、思っちゃいました。
    でも、すげぇ肝っ玉のでけぇ人間、出来た奥さんですね。
    羨ましいです。

  2. もちろん、5秒後には「アンタっちゅう人はアンタっちゅう人は」と言われ続けております。
    もちろん、もちろん、僕が「もうイラン!無かったことにするよ!忘れるよ!」なんてケツが裂けても言えない小心者だってことを見越しての発言ですとも。

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