胡散臭い恋

僕はなぜか北海道と縁があって、1,2回しか行った事がないのに、北海道関連の集まりに参加している。
先日もその集まりの忘年会があってしこたま飲んできたのさ。
そこでの話。
北海道の人は地続きのロシアへ働きに行くことがあるそうだ。「なんもだー」というお人柄なので国境とかそういうことは鷹揚で(*1) ほいほいロシアに行くらしい。
その男も、官庁の仕事で数年単身赴任でロシアに出稼ぎに行っていて、最近帰ってきたところだという。
酒の席の男の会話だ。その男の友達が彼をからかうわけさ。
「単身赴任で何やってきたんだよう」って具合に。
「いやまあ、そりゃ」
「ストッキングいっちょで釣ってきたんか」(*2)
「そんなもの使わないよ、俺にかかればイチコロ」
「何言ってんの、ヒゲとか生えてたんじゃないの」(*3)
「いや、すげえ美人だって。俺に言わせりゃシャラポワなんて目じゃないね」
「いやー、でもロシア娘は20歳超えるとスゲー勢いで太るって言うしさ」
「そんなことないって。モスクワなんか全然ヨーロッパな感覚でエクササイズも流行ってるんだよ」
「あれ?お前北方領土に赴任だったじゃん。モスクワなんて」
「や。そりゃ時々は」
「ワキガとかは?」
「とんでもない。毎日サウナ入ってんだって。俺も一緒に…うへへへ」
そんな具合に、自分の彼女がいかに美人だったかを自慢するんだが…。
しかし、どこから見ても冴えない男なんだがなあ。……


しばらく話を聞いてるうち僕はピンと来た。
「おい、まさかそれ、カーゲーベーじゃないのか」と聞いた。
すると途端に、彼はうろたえてしどろもどろになった。
「いや…それは…」
その様子を見て周囲の友達が訝しげな顔をする。
「KGB。秘密警察だよ。今は組織としては無くなったらしいけどね」
僕だって、まさか知り合いが諜報活動に関わりを持つなんてことがあるとは思っても見なかった。
役人がロシアに行ったというだけで、こうやって女がつくというわけだ。
彼がどのくらいの情報を持っているのか僕も知らないし、ましてや情報の何にどんな価値があるかもわからない。だから彼が何かスパイされて情報を漏らしたのかはわからない。
ただ、こうやって、日本人の役人が、本人もうすうすスパイだと感づいているにも関わらず、きれいなロシア娘にメロメロになったのは良くわかる。
「偽装結婚をして入国した外国人が逮捕されたって話があったでしょ。とんでもねえ、ってその娘に話したんだ。そしたら『あなたが日本に帰った後、私が会いたくなった時に入国できなくて、それでもどうしても会いたくて、他の誰かと結婚したことにして入国したら、あなたはどう思うの?』って真顔で聞かれちゃったんだよ。俺には何も言えなかったよ」
と彼は言う。
こうやってロシア贔屓の役人ができる、ということなんだろうな。
ロシアのやることなら多少のことは大目に見てやれよ、という意識を持ってる人がこうやって増えていくんだろう。
北方領土が日本のものになったら、あんな辺鄙なところに住みたいって言う日本人なんかいやしないし、ロシア娘とも会えなくなってしまうから、北方領土なんてどうでもいいと思うだろうな。
しかし、こんなに簡単に篭絡されてしまうのだから、ロシアだとか北朝鮮だとか中国だとか、ちょっと、ほら、アレな国とつき合いのある役所は、こんなことがありうる、という注意喚起や対策は取らないんだろうか。多分、こんなの、日常茶飯事に起きてることなんだろうと思えるじゃない。
…ひょっとして、みーんな、そういうことがあるってわかってて、共犯者を作るために… いや…まさか…
断っておくが、この話は酒席でのヨタ話であって、裏づけも何にも無い。
男のくだらない自慢話のひとつでたっぷりの誇張があるはずだ。
だからコトの真偽を僕に尋ねたり、彼が誰かを聞かれても困る。
*1…ただし、猟場の縄張りは死を賭して闘う
*2…共産主義の時代、ちょっとしたオシャレ物は贅沢品で市場になかったので、ストッキングが無く、ストッキング1枚で女が買えたという、いにしえの伝説
*3…いにしえの伝説
—2005.12.29追記—
なんだかタイムリーな話題になってしまったので、関連のところに改めてトラバります。

6 thoughts on “胡散臭い恋

  1. かなり昔、チャイナにいたときに、四川省某所のえらい人の娘と付き合っていたのだけど、僕のケースも似たようなもので、実はスパイされていたのかな。
    って、俺は役人じゃないから、俺をスパイしても有益な情報は出てこないんだけどな。
    劉ちゃん元気かなぁ。写真にちゅうしてみようかなぁ。

  2. そっす、良くも悪くも鷹揚なんですよ。(´・∀・`)アハハハハ
    でも切る時もドライですよ。
    離婚率ワースト3ですからええ。

  3. 歴史のしがらみが無いところ、生活ができるところは離婚率が高いんですよ。
    結局結婚と言う制度は「経済単位」の側面があります。

  4. なるほどです。
    うちの両親は、結婚以来口論が耐えなかったんですが、
    離婚は結局経済的な理由が最後の後押しになりましたね。

  5. 最近、結婚についての相談を受けることがあります。僕は決まって「そんなもん、わかんないんだから思った時に結婚してイヤなら別れりゃいいんだよ」って言ってます。
    一生添い遂げるなんてのは現実社会を見りゃ幻想だってわかるし、そのくらいのつもりで気軽に結婚する方が幻滅の落差も大きくないんじゃないですかー

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