映画「世界最速のインディアン」を見た

奥さんを誘って映画を見に行った。
indian_b.jpg
世界最速のインディアン
http://www.sonypictures.jp/movies/theworldsfastestindian/
けっこう評判のいい映画で、何も知らない人と見に行っても退屈しないと聞いたので、奥さんでもバイク映画もいいだろうと思ったんだ。
僕のような人間は何を考えて、何が好きで何をしたいと考えているのかを奥さんに知って欲しいとも思ったし。

ニュージーランドの田舎町に住む孤独な老人、バート・マンローはバイクマニアで、長年アメリカ製のオートバイ「インディアン・スカウト」の改造に熱中している。
いつかアメリカのボンネビル・スピードウェイで最高速度を試してみたいと考えているが、年金暮らしの身にはそんな資金も無い。
しかし、狭心症の発作に襲われ、自分の命もそれほど長く持たないと考え始めた彼は、ついにボンネビルに旅立つことを決心する。

「ボンヌビルじゃなくて”ボンネビル”だろ!」
「アクセルじゃなくてアクスル。車軸のことだ」
「300km/hを超えたのがスゲーんじゃなくてだな、200マイルを超えたからスゲーんだよ!」
と、イチイチ気になる部分はあるものの、うん、いい映画だと思う。
(チッ、モリワキ、ちゃんと監修しろよ)
…だけどねえ…
 僕はちょっと物足らなかった。
彼の人生は、僕の足先と地続きに続いているものだからだ。
狭心症の発作を起こしてなおバイクに乗りたいと願い、その上、人生最後の機会にとボンネビルに旅立つ決心をするマンロー。
狭い操縦席に入れないと、自分の足に巻いた遮熱布をはずし、そんなことしたら火傷する、と止める友人たちに「足ならスペアがある!」と叫ぶマンロー。
それは俺のことだよね?
この映画は「何かを始めなくてはと考えている人」にはとても大切な映画だ。
しかし、「何かを始めようとは全く思わない人」と「すでに何かを始めている人」には物足りない。「5分が一生に勝る」「夢を追わない人間は野菜と同じだ」彼の言葉は僕の胸に響いたけれど、それは僕の中で繰り返されている言葉だからだ。
マンローの生きた世界は僕と地続きだ。
ハヤブサ ターボは、彼が走ったソルトレイクで250マイルで走った。時速400kmだ。
ストリームライナーのような競技専用車両と違い、小改造での公認記録として「世界最速の市販バイク」と呼ばれることになった。
時速400kmで走った男は大阪の BabyFace佐藤さんの友人だ。
で、このバイクをチューンしたNLRと僕は何度かメールでやりとりをしている。
実に親切な…オヒトヨシな人だ。
多分、マンローを助けたヤンキーたちも、きっとこんなオヒトヨシ連中なんだろう。
アメリカのビジネスマンは実にイヤなやつらが多いそうだが、田舎の連中は実際のところオヒトヨシばかりだ。
極東からアメリカまでターボキットを探してるとBBSに出入りするような僕みたいなのは珍しいらしい。ハヤブサBBSでは日本人は僕しか見当たらなかったからね。
マンローが受けた親切や、ソルトレイクの風は、僕もほんの少し味わっている。彼らのオヒトヨシな親切はアメリカ人の美点だ。
(NLRのセバスチャンはスウェーデン移民の子だけどねww)
奥さんに映画の感想を聞くと
「うーん… 守るものが無いってイイナーって」
 と肺腑を抉る的確な感想をいただきましたよ。
 翻訳: → 夢を追うのはいいけど、まずはやることやってからナ。
ウホ♪
さすが奥さん。ホントによくわかってるわねえ、イ ケ ズ 。
まあなあ。
昨日も合気道の練習行って、手首傷めちゃったからなあ、俺。腫れてるし。
「そんなん、アンタ、向いてないんだからやめたら?」
って、奥さん心配して言うんですよ。それわかってて
「いやそりゃオメー、向いてるとか向いてないとか才能あるとか無いとか体力あるとか無いとか、40も過ぎて始めた合気道にそんなもん関係ないのよ。 才能なんか何一つ無くたってやるんだよ。手首モゲても首がモゲてもやらんよりやった方がいいんだ」
って言ってましたからね。
あんまりいい気になって好きなことやらせとくと本気でやらかしちゃいますからね、きっと。
奥さんとしては懸命な判断ですよ、ハニー。
今回の映画評、僕にとっては辛目になってしまいました。
僕はマンローにとてもシンパシーを感じているけれど、マンローの行動は、僕らにとってなじみのものだ。
「足なら代えがある!」と叫ぶマンローに、僕らは「ああ、じゃしょうがない」と真顔で返すんだ。
だから、僕はマンローが、マシンに何を行ったのかをもっとよく知りたかった。
彼が鋳造したピストンだとか、削り出したシリンダー、当然最新式のキャブに換えてあるはずで、どんな調整をしたのか。空気取り入れ口はラムエアシステムがついてるみたいだが、燃調はどうやってとったのか。その苦労や工夫を知りたかった。
その積み重ねが「スピードの神に捧げる」供物であり労働であったはずだ。僕らはそれを見るだけでマンローに感動することができるだろう。
ええ、ノンケの人にはわからん話でスマン。
が、特にオッサンたちは見るが良いよ。もうそろそろ人生の折り返し地点だと思えるお年頃のオッサンにはオススメ。
オマイラそろそろ何か始めないと何にも無いまま人生が終わっちまうぜ、ってお話。
来いよ。
コッチ側にさ。

11 thoughts on “映画「世界最速のインディアン」を見た

  1. 見たいような気はしとったんですが、ウチらの近所では「オサレ魔女ラヴアンドブェリー」くらいしか上映しておりません
    マイカル加古川なぁ~ 行くのマンドクセーなぁ

  2. なぜ奥さんを誘われたのか、そのこころをうかがいたいです。
    失礼な憶測をするならば、パラシュートのトリガーが機能するのか確かめたかったのでしょうか?

  3. 愛しい人とは価値観を共有したいから。
    あるいは、分かってくれていることを確認したいから。
    まぁ、結局、「おのろけ大魔人」だったということですよ。(*^^*)

  4. >たけちよさん
    見るとなかなかいい映画ですよ。
    シンパシーは感じると思います。しらいシャチョーのとこに集まる連中みたいに「む、ジイサンなかなかやるじゃない」って感じでヤンキーたちが集まってくる感じはよーくわかると思います。
    彼らが共感を持って集まってくるのは、みんな、同じ気持ちを持ってスピードトライアルに来てる連中だからですよ。
    そういうところはよーくわかるけどさ、思いもしない感激っていうよりも、僕らにとってはニコニコして「うん、そうなんだよ」っていう感想になっちゃうんだよね。
    >takesi
    >ぴぴさん
    えーとですね、あわよくば「さすが父ちゃん見直した」って思ってもらおうと。
    したら「ま、やることやってからな」ってえんで、さすが母ちゃん、一枚も二枚も上手ダタヨ

  5. いいなぁ。夫婦で映画。家の旦那は映画に付き合ってくれないんですよ。最後に一緒に見たのは多分「スーパーマリオ」
    何とか竹熊さんのお見舞いに連れてってくれないか、さりげなく打診してるんですが気がついてくれない…。面と向かって言ったほうがいいんでしょうか。

  6. > 電磁郎さん
    「さりげなく打診」てのはダメです。男なんてみんなバカで鈍感なんですから。
    面と向かって言った方がいいし、多分旦那のほうも喜ぶと思います。
    たけくまさんのお見舞いは相手が曲がりなりにも異性なので、そこはうまいこと説明するといいと思います。

  7. 的確なアドバイス、ありがとうございます。
    そうですよね。はっきり言った方が良いですよね。
    今夜にでもがんばって話してみたいと思います。

  8. こんばんは。
    たまにここを拝見させていただいております。
    この映画も気になる映画ですが、400km/hで走るハヤブサターボが気になってしまい、思わず書き込みしてしまいました。
    非常に興味があります。

  9. いいですね。
    帰ったら、久々に映画館へ足を運んでみようと思います。
    私は自分が60歳まで生きられるかどうかは微妙だと思っているので(ネタではないです。心臓の弱い家系なので。父親も57で死にました)、そろそろ人生も折り返しかな、という気持ちをもってます。何か示唆されるところがあるかも知れない。

  10. > 電磁郎さん
    とりあえず男はみんな脳ミソがチンコの先についてるってことだけ覚えておけばダイジョブです。
    > てつやさん
    らっしゃい。ごゆっくりどうぞ。
    ジョン・ヌーナンが時速400kmを超えたときの記事…というかBBSでの報告はこのへんだと思います。
    http://www.suzukihayabusa.org/forum/index.php?topic=35033.0
    「John Noonan 253mph」でググるといろいろ出てきますね。
    エンジンは550hpくらいのようです。
    キットはベロシティレーシングのものを使っていますね。
    今はもう少しトップスピードは上がっていると思いますけど。
    …お、ググってたら、彼のビデオがありましたよ。エルミラージュとボンネビルでの走行が写っています。
    http://www.nickslick.com/videos/noonan.wmv

  11. うわ。遠くインドの地からわざわざスマンww
    > さおくん
    君みたいのが早死にするのはとっても残念で寂しいことなので、なるだけ長生きするよう、僕のほうからも神様にお願いしとくよ。
    とはいえ、僕の「折り返し地点」だってずいぶん怪しいもので、もしかするとゴールのテープに気づかないだけなのかもしれない。それは誰しもわからないことだよね。
    まあ、平均寿命で言えばこのへんが折り返しってことだろ、と思うと、自分の人生について考えはじめるってことで。折り返し地点があるってことに気づくだけで、僕らの人生は無駄にできないって気になってくる。
    君の場合は、長いにしろ短いにしろ、今、折り返し地点の存在に気づいたってことはいいことだ。人生を大切にするだろうから。
    あ、えーと、屁ェこいたり鼻くそほじったりぐうたら昼寝したりするのも「人生の大切なこと」なので、そのへんはよろしく。

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