真実の口

 僕は何度か「人は理性や合理ではなく、迷信をもとに行動する」と言ってきた。
それは、「大衆なんてケモノ以下のバカな生き物だよ。僕はそれに気づいているが、合理的な考え方をしない連中はどうしようもない」と見下した気持ちが僕の中になかったとは言えないことに気づいた。

adrift: 時計よ、誰がために時を刻む-1
自分が死ぬときは、腕時計で看取られたい。スイスで生産される時計の5%しか通過できないクロノメーター規格の時計ですら、日差?4?+6秒の誤差がある。どう考えても、ケータイか電波時計の方が正確だ。でも、Gショックの電波時計なんかで、死亡時刻を見られるのはいやだ。パテックフィリップとは言わないけれども、オメガやIWC、ベル&ロスぐらいのまともな時計で看取ってもらいたい。

 もちろん、僕も、まさしくそのための時計であるIWCポルトギーゼか、せめて僕が買えなかったドッペルクロノグラフで看取ってもらいたい。たとえIWCでもGSTなんかじゃイヤだ。
 ケータイについてる時計なんかで看取られた日にゃあ、死んでなんかやらん。テコでも死なん。
 青白い不吉な顔をした医者が、神経質そうにIWCポルトギーゼを見やり、汚れてもいないサファイヤガラスをガーゼで丁寧に磨きながら「ご臨終です。何時何分」って言われたら、まだぴんぴんしてたって死んだような気になるだろう。
 僕自身が迷信をかかえている。
 神話に依って生まれ、物語に依って生き、迷信に依って死ぬ。
 快適に安全に速く移動するためならばグリーン車にでも乗ればいい。その方が合理的だ。
 僕は迷信によってバイクに呪われている。僕はバイクに選ばれているのだ。(だからってバイクでは死なないっ)
 僕はこのところ、イライラしている。
 簡単にわかる事実を知ろうとせずに、無知のままでいようとする人に立て続けに会ったからだ。
 専門家のMLで、本も読まずに基本的な了解事項さえ無知なまま得々と見当違いの自説を主張する人。
 アクロバットをする飛行機の動画を「こんなのはウソだ!」と言う人。
 生体移植をしたレシピエントがドナーの嗜好を引き継いだと頑なに信じる人。
 そんなもの、調べればいいのに。ちょっと検索するとか、実際に行ってみるとか。
 事実の方がよっぽど面白くて広がりがあって関わりが持てるのに。
 僕は自分の抱えている迷信に手一杯で、これ以上の迷信はいらない。

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