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かくも永き巫女の不在

  • 投稿者: nomad
  • 2006年11月21日 1:36 AM
  • 時事

音極道での「水伝批判:批判」について、いろんな方面から反応があったらしい。
僕からすると水伝関係のサイトも音極道も両方とも懇意にしているサイトだったので、とまどった。
僕も渦中にいるうちは気づかなかったが、いくつかのサイトの意見を見聞きするうち、わかったことがある。
田崎さんは、あの水伝批判文書を書く必要は無かった。
田崎さんは象牙の塔の遥か高いところに住む科学者だ。
科学者の仕事は、研究し、論文を書き、学会で発表する。以上。
下界の教養の無い、無知蒙昧な連中が、お粗末な戯言で迷うことなど、本来何の関係もない。
関係ないはずだった。
ところが、水伝が学校の道徳の授業として取り上げられ、子供たちが非科学的な考えで洗脳をされようとしているのを知り、自らあの文書を書かざるを得なくなったのだ。
そのままほっておいたら、自分のところに来る学生の質は落ちて行くだろうし、科学という分野がおろそかにされてしまうだろう、という危機感からだ。
本来は、あの文書は子供向けというよりも学校の先生にターゲットされているのかもしれない。
先生たちがあれを教材にできれば、水伝をきっかけにして、「科学的思考方法」について生徒に教えることもできるだろう。
ああした文書が「権威ある科学者の言葉」として公にされていれば、科学的素養の無い先生たちを教育することもできるだろうし、あやうい論を牽制することにもなるだろう。
しかし、J2さんは、そうした背景など知らなかった。
多分、「水からの伝言」も読んだことは無いだろう。(僕だってそんなバカバカしいのは読まない。と学会の報告だけ読めば十分だ)
科学者が十分な説明をせずに、権威で水伝を否定したと読み取ったのだと思う。
だから科学者が科学者らしく水伝を否定するには科学という装置を使って行なうべきだ、と指摘したのだ。
そうした手続きを踏まえず、一方的に否定したものを信じることは水伝を信じる人たちと、そう変わらないではないか、と言ったのだ。
J2さんと田崎さんのすれ違いは、こうした背景抜きでは語れないのではないか。
田崎さんの目的が違うのだから噛合うことはない。
それともう一つ。
……


J2さんをはじめ皆さん、学者とか学会のことについて、リアルな想像をしていないんじゃないかという気がする。だからJ2さんもつい「やればいいじゃん反証実験」というタイトルのエントリを上げてしまったんじゃないだろうか。
僕自身もkumakuma1967さんに
> なんて言うバカの話を載せちゃったnomadさんの脇がちょっと甘い気がします。
と厳しい指摘をされちゃってるくらいだから、十分によく知ってるとは言いがたい。
まあ、それでも、何人かは学者の友達がいて、彼らと話を(バカ話も含めて)する中で、彼らの生活や苦労というのもなんとなくわかる。
大学で研究してるか、企業か、公共機関の外郭団体か、どんな研究をしてるか、などで違うんだろうが、必ずしも彼らみんなが「象牙の塔の住人」ってわけじゃない。
もちろん象牙の塔に住む人たちもいないわけじゃないが。
学者にも恵まれた人はいるんだろうが、僕が知ってる学者連中は、皆忙しい。
象牙の塔に住んでいたとしても、彼らは象牙の塔の貴族ではない。百姓だ。
高い塔に住んで、せっせと高い塔のテッペンの畑を耕しているように見える。
耕し続けないと、高い塔から投げ落とされるからだ。
僕の友人の一人は、小さなきっかけで高い塔から投げ落とされてしまった。何か研究でヘマをしたわけじゃない、移籍するときのちょっとしたタイミングを間違えたせいで宙ぶらりんになってしまったのだ。
あわてて就職活動をはじめたものの、体を壊したり、私生活が混乱したりしたのも重なり、プー太郎になってしまった。
あまり流行の分野の専門ではなかったために、国内はもとより欧米の大学、企業に片っ端から打診したものの、芳しい成果は得られなかった。
研究生活は諦め、企業に就職しようとすると工学博士の肩書きが邪魔をする。オーバースペックだと言うのだ。
結局彼は何年も不遇をかこつことになってしまった。
これは特別な話じゃない。
山形大学の天羽さんは「研究者が供給過剰になり、就職先が過当競争となって、好きで始めたバイク便ライダーが搾取される構図と変わらない」という意味のエントリを上げている。

事象の地平線::—Event Horizon— :: 需要と供給を無視するからいけない
現状では、平均より3年余計に学費を払い、その間の収入は一部(学振など)を除いて無く、修了してからは任期制の職ばかりで3年に一回転職を強いられ続け、アカデミックやら研究機関やらに職を得られるのはそのうちの一部だけ、残りは企業への就職を考える頃には企業の好む年齢をとっくに超えていることになる。途中でケガや病気をしたら、社会保障が弱い状況に置かれているので大ダメージ必至である。それでも「高学歴」「好きでやっているから」「意義があるから」という価値観でもって研究に邁進する……というと聞こえはいいが、雇用という面から見ると、ちょっと前に紹介した、バイク便ライダーの世界とちっとも変わらない。やってることが、体を使ってバイクを転がすか、頭を使って研究をするかの違いだけに見える。イヤなことに、脱落した人間が完全にその世界から消え去るというところまでそっくりである。

天羽さんへのトラックバック先で紹介されていたものでこんなものがあった。
博士が100人いる村
ここでは博士を取った者のうち16人が無職、8人が死亡または行方不明としている。
どんな資料からこういうのが出てきたのかちょっと調べたが、どうやら文部科学省の「学校基本調査」のようだ。
平成17年3月卒業者の卒業後の状況調査によれば
博士課程卒業者  15,286名
: (略)
就職者        8,723名 (57.1%)
: (略)
専修学校・外国の学校等入学 270名 (1.8%)
一時的な仕事に 就いた者   753名 (4.9%)
左記以外の者(つまり無職) 3,950名 (25.8%)
死亡・不詳の者         1,436名 (9.4%)
となってるから多分そうだろう。この統計の数値の意味まで追いかけていないので「100人の村」の表現が正しいかどうかはわからない。
が、博士号を取っても、将来が約束されているわけではなさそうに思える数値だ。修士課程の卒業者は「左記以外の者」は13.5%、「死亡・不詳の者」は3.8%なのだから。
こうした状況にいる彼らにノーブレス・オブリージだけを期待するのは、それは過ぎた要求だろうと思うのだ。正直、僕は学者たちに対してちょっと同情してしまう。
だから、僕は、今、研究の職にあって、前途有望な研究者は、その職務に励んで欲しいと思う。それが高コストな準備期間を経て高いスキルを身につけた人の、社会への正当な貢献だろうと思うからだ。
自分がやっている高度で難解な研究の意義を、納税者にわかりやすく説明するのも研究者の役目だ、という論調もチラっと見つけたが、リテラシーの高低がある中でそれを求めるのはやはり酷だろう。予算をつける専門家がそれを理解し、評価できればいいはずだ。
研究者の成果に対して、僕らにもわかるように説明する役割は別の者が負うべきだ。
それは学校の先生や、サイエンスライターが追うべき仕事じゃないだろうか。
神の言葉を下々に下ろすには預言者が必要だ。
高い塔の上からお告げをもって降りて来る巫女が必要だ。
サイエンスライターには、少しほろ苦い思いも持ってはいるんだが。
茂木健一郎はテレビの仕事なんかやめればいいのに…

最後に少し言い訳。
石器捏造事件に見られるように、学会だからすべてが科学的というわけではない、というのは全くkumakuma1967さんが言う通り。
学会全体がトンデモ方向に走るというのはありえる話。
学者達もノーブレス・オブリージとか奇麗事を言って顎が干上がるよりも、右へ倣えして、ウケのいい目先の論文を書いていた方が睨まれない、というのもあるだろう。やっぱり学者も、その社会の中で生活しているわけだから、生活を優先したいだろう。
水伝との対比という点で、「学会の方が信用できる」という意味だったものだと思ってもらえたらと思う。
また、
『「スコアが無い研究などどうせゴミなんだから、わざわざゴミの近くまで行って指差して「これはゴミだ!」なんていう必要は無い」って、僕に説明してくれた研究者の人がいたっけ。』
の件。
僕は、この時、あるメーリングリスト上に現れるトンデモさんへの発言にいつも厳しい追及をしていて、トンデモさんの言動に辟易していた。
僕のような者がトンデモさんを追及するのに、研究者はスルーしてばかりで、なぜ追求しないのか、と聞いたところ、上記のような発言になったものだ。
僕が経験した場面の、一連の流れの中での発言だ。
いつもどんな場面でも当てはめられる言葉というわけではないだろう。

コメント:8

takesi 2006年11月21日

たけくまさんが侮辱的コメントにほとんどスルーされるのはそういうわけなんでしょうかねー。
ちょっと納得。
代わりに噛み付いてくれるギャラリーもいますしねー。

永田電磁郎 2006年11月21日

とりあえず田崎さんがコメントをつけてくれたあたりまで読めました。
似非科学って救世主を求めている市井の人々には受け入れやすいんですよ。

nomad 2006年11月21日

たけくまさんが侮辱コメントをスルーするのは、戦術でしょう。場が荒れないようにするためのね。
科学的態度ってのはそういうのを抜きにして、正しいか間違っているかを追求する場ですので、雰囲気を大事にする必要なんて本来は無いはずなんですけどね。
> 救世主を求めている市井の人
新興宗教よりもマシに見えるからでしょうね。
でも、時には新興宗教よりタチが悪かったりしますよ。金取られますし。
それに、そういう似非科学に騙される人は新興宗教にも騙されます。間違いなく。

kori 2006年11月22日

そうです。騙されます。
だって馬鹿なんだもの。
しかも騙すほうは騙すつもりで騙しのプロがやってるんだからねー
でもなー。
捨てるよな金があるなら、どこの山に捨てたかをれにだけコッソリ教えてホスイ。

永田電磁郎 2006年11月22日

そしたら私にも少し分け前ください。

takesi 2006年11月22日

もともと俺の金の可能性があるので返して欲しい。
よろしく。

nomad 2006年11月24日

pppppパソコンが壊れただすこれはなにかののろい?陰謀?
水を呪ったので悪いことが起きたに違いなくくわばらくわばらおはら
お金を持ってる人は使い方を知らない。
使い方を知ってる人は貯め方を知らない。
とりあえず500万あれば自分用のバイクを作るので誰かクレ
(あっバイク屋に騙される)

takesi 2006年11月24日

↑既に騙されてるのに (泣

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