イラク派遣

 最近僕は自衛隊がイラクへ行くことへ反発を感じ<られなく>なっている。
 自衛隊がイラクへ行くことが「戦争をしに行くこと」と同じだというのは単純化しすぎだろう。「戦闘地域に行くこと」ではあるだろうけれど。
 もし、自衛隊派遣に反対するのならば、国策としてそれが正しいかどうかを検討しなくてはならないだろう。
 僕は今の時点では正しいかどうかは留保している。戦争に行くのなら反対するだろうが、そうでないのなら「その国策が国益になるか」を判断すべきだからだ。今の時点では国益となるかどうかはわからない。イラクの人たちは日本人が来ることを歓迎しているという話も聞こえるし、そんなのはまやかしだという声も聞こえる。人道かどうかは全く別に多分、アメリカに尻尾を振っておくこともブッシュ政権の前では必要なんだろう。石油利権を確保しておかなくては文明(その定義には異論があるだろうが)を維持していくには必要なんだろう。


 多分、自衛隊の隊員は何人か死ぬだろう。
 しかし、それを戦死だと言うには情緒的に過ぎるだろう。
 僕たちは死の危険を恐れて働けるだろうか。
 船員は海で溺死することがある。ボイラーマンは酸欠死することがある。電気技術者は感電死することがある。とび職は墜落死することがある。農業に就く者は自殺することがある。レーサーは激突死することがある。従軍記者は撃たれて死ぬことがある。
 僕たちは生まれてきたときから死ぬことになっていて、仕事の最中に死ぬことだってある。
 危険な場所で危険な仕事をしなくてはならないことがあって、それは訓練されたプロでないとまっとうできない種類の仕事だ。
 自衛隊員でなければできない種類の仕事もあるだろう。
 自衛隊員の派遣参加希望者は多かったそうだ。
 金になる、名誉になるというのももちろんあるだろうが「望まれたやりがいのある本番の仕事」をやりたいという希望があった、というのは頷ける。
 僕たちは皆、役割を得たいのだ。自衛隊には今まで役割がなかったのだ。
 望まれた仕事を成し遂げるために死の危険を冒すことを否定することはできない。
 「国のために死ぬ」という言質がフィクションであることが共通認識となった今でも「危険だが価値のある仕事を成し遂げる」という僕たち個人が抱え込んでいる幻想は崩れてはいない。多分これから先も。

4 thoughts on “イラク派遣

  1.  今日ニュースステーションでも報道されていたので先遣隊のニュースを見ていました。先遣隊の隊員一人一人がいったいどんな人なのかは僕にはわかりませんが、恐らくプロ意識を持って仕事をしてくれると思っています。報道されていた映像からは、死ぬかもしれない現地へ赴く隊員達も、見送る家族の姿も、僕には感じるものがありました。
     究極の理想は平和。ですが、地球人(俺が火星人だと言っていないし、金星人でもない。そんなことは聞いちゃあいないか?)がそこまで至っていないし、いろいろなことがあって日本人が現地へ赴く事になってしまった処までは仕方無いとしましょう。仕方ないどころか応援する気になっている自分にさえ気がつきました。良いか悪いか別にして。更に無事で帰ってこいという気持ちにも...
     ニュースステーションではその続きがありました。以前、アフリカに迷彩服に拳銃を携帯して派遣された時の事です。それまで作業していたスウェーデンの消防士から水の確保を引き継いだのだが、数々の難問(というかニーズとシーズのずれ?)に自衛隊員が直面したというのだっ。大本営の作戦がまずい(大本営じゃあなかったね。簡単すぎる説明でごめん)で、今回も似ていると言うのだ。救いに行く都市から3kmも離れた場所に2重のフェンスを張り、住民とは隔絶された状態で、飲料水作りを行い。現地の人に給水車で取りに来てもらう。交流は無し。(仕事に現地人を採用するなど)その部分で(気持ちだけかもしれないが)経済的に活性化する事も行わず。ただ、ただ黙々と水を作ると計画だというのだ。ニュースでは救済のターゲットになっている都市が断水して困っている真の原因は、頻繁に起こる停電によってポンプが止まるからだから、本当に必要なのは電気だと結論付けていた。
     そのまんま信用するかどうかは別にして、もし、的外れなことをやりに行くんだったら、国際協力とか国際貢献とか国益とかの点数稼ぎにしかならないのだったら、恥ずかしいし悲しい。それに追い討ちをかけて死傷者が出たら馬鹿馬鹿しいと思う。絶対無事で帰って来て欲しいと思う。
     と言うのが、今日の気持ちでした。
    #以上、日本語が下手なイカでした。

  2. そー言えばカテゴリが[こころ]になっている。
    心と言えば、漏れもどーも心が犯されている。
    と、思う。黄色い病院行きかな?

  3. 兵隊さんは工夫しない。命令に従うだけ。
    だから民間との交流をするなら消防とか、そういう組織が行くべきかもね。
    救援活動をする組織が自衛隊内にあってそういう訓練をしてるなら自衛隊が行く意義があるかも。

  4. ああー。
    でもアメリカで「イラクに行く勇敢な彼らを貶める言葉を吐くのはやめよう」というキャンペーンっつーか雰囲気があって、アメリカの対外政策そのものに目をそむける風潮がかもしだされているから、日本もその轍を踏んじゃいけないよね。
    僕らがきちんと見なくちゃいけないのは「日本の国の政策として国益になることができているのか」っていう所で、そういうのは見届けなくちゃいけないよね。

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