サイトの運営

思うことがあってある弁護士サイトのことについて書いたら、思いもかけず反響がありましたので、気を良くして、当初書くつもりはなかった点まで踏み込んでみることにしました。
あんまり「ダメなサイトのどこがダメか」なんてエントリはする気はないんですけどね。
良いサイトを紹介して欲しい、品質の高いサイトを集めたポータルがあったらいいな、と夢想しているだけなんですが。
サイト運営者の端くれとしての「べからず集」的な言い方をさせてもらえたら。
僕は右か左かの論議には興味ありません。
いくつか、この弁護士の主張の中には思うこともありますが、ここでは「サイトの運営」についてのみ話を進めようと思います。
まず、「コメントスクラム」なんてもんは無いんですよ。
コメントスクラムという語感から「組織された人たちによる抗議行動」をイメージしますが、「あらかじめ組織されている集団」どころか「あらかじめお互いの存在を知っている集団」でさえない人たちに「スクラム」という言葉を使うのは適当ではありません。
……


「なぜ組織された集団でないとわかるのか」という疑問には「彼らがそう言っている」というので十分でしょう。十分でないとすれば「彼らが言っていることは嘘で実は組織されているのだ」ということを僕でなく、この弁護士が証明しなくてはいけません。
もっとも、例えば僕はgooのRSSリーダーのデフォルト設定にあったから見つけたというだけですし、もともとHotWiredという老舗のポータルサイトでの連載なんですから、「こんなにたくさんの人が来るのは組織のせいだ」なんて思うこと自体が滑稽です。
いずれにせよ、こうした環境下では(組織されているという証拠や申告もないですし)、個々人のクチコミで参加しているとみなさなくてはなりません。
「2chで見てきたという人たちは2ch住人という集団ではないか」という意見がもしあれば、それもズレています。
Googleを見て来た人をGoogle住人とは呼べないように2chの参加者もさまざまです。2chが日本のクチコミのポータルサイトとして機能している現状では、2chを経験していないサイトを探す方が現実的じゃありません。
(証明しろと言われても信頼できるデータを持っていませんが、2ch内部であらゆる言質が交換されている様子からすると2ch特有の偏向があるとは私は考えにくいです)
ですから2chでこの弁護士のサイトに言及されはじめた当初は、情報収集するための場として機能しているだけで、彼を攻撃するための前線基地(トップフロントって言うんですか?)ではありえません。…もっともこの弁護士がここまで外部に対して攻撃的な姿勢を鮮明にされた後では野次馬用野外宿泊所ぐらいには今では機能しているんでしょうね。
ある政治的傾向を持った人たちが集まっているように見える…のはそうですね。
でもそれはサイト運営者本人の記事によって集まってきたからですよね。
女性下着を売っているサイトはほとんどの顧客は女性でしょう。
それは「2ch住人が組織した集団が顧客として集められた」ってわけじゃありません。多分、その下着サイトにも2ch住人はいるでしょうけどね。
それに「大量のコメントによって運営を困難にさせられる」なんてものも間違いです。
100や200のコメントは制御可能です。
僕は自分のblogをやりながら、炎上していると言われている人のblogを読んで感想を書けます。
ですからサイト運営者本人が必要な反応を物理的に返せないなんてことはありません。
これだけの数になればすべてのコメントに反応を返す必要なんか無いですからね。あるコメントは書き捨てだし、あるコメントは重複した内容です。重要な主張に対して反応を返せば十分です。
まあ、僕のサイトは「世界で3人のためのblog」ですから(笑) コメントが殺到することは残念ながら期待できないんですが。
それでも20年位前に草の根BBS(←おいここにぢぢいがいるぞ)を運営して、週一で主要な書き込みに反応するという作業をした経験からすれば、全体の流れを、小さな労力で誘導することは可能なんです。書き込みにresしてたその時僕は「おまいらもっとたくさんおもろいこと書け」と思ってましたからね。
毎日1000もコメントがあれば確かに厳しい。しかし200のコメントが500あっても大丈夫ですよ。
だいたいコメント数が多くなってくればコメンター群が自律制御しだします。コメンター達が、自分自身のコメントをフォローしきれなくなってしまいますから。
つまり、せいぜい2chのスレッドが延びていく程度のコメント頻度であれば、十分フォローしていくことは可能なんです。僕ならおおよそ2人、多くて3人のコメンターをターゲットにきちんとした反応を返せば十分炎上を防げたと思います。
物理的な数量がサイト運営者を圧倒するってことは、ないです。
もし、コメント数がある数量(例えば500)を越せば、ある意味運営者側は何もする必要はなくなります。そこまで延びるのは、コメント群がサイト運営者の意思を越えて自律した時ですから。
じゃあ運営者を何が圧倒するのかと言えば、これは純粋に意見そのものです。
賞賛の嵐で200も300もコメントが続くというのはありえません。納得できないから繰り返されるんです。
だから数量≒批判と受け取り易いんですがね。
あ、今僕、ちょっと良いこと言いませんでした?
納得できないから繰り返される
賞賛の場合は、皆が納得してるから繰り返さないんですよ。
批判は「なんでキッチリ説明せんのだ」「そこはこういう角度で見るとだいぶ違うじゃないか」「そんなことはこっちは言ってない」「条件をはっきりさせてくれ」なんていう要求が積み重なったものです。「お前バカだ阿呆だ死んじまえ」っていう罵詈雑言さえも長続きはできません。退屈ですから。
つまりですな。 数量の多い批判とはすなわち質問である。 これですよ。
正しい問いに正しく応えれば、その時点でコメントは終わるんです。
なんらかの理由で正しく応えられないからコメントが続くんです。
それを「コメントスクラム」と呼んではいけないでしょう。
スクラムは、スクラムをする側が主体的に行動するわけですが、実のところ、結論を得られないため終了できずに宙ぶらりんな体勢をサイト運用者によって余儀なくさせられているわけですから。
悪意のある人たちが、破壊工作をしてると考えるのは楽チンですよね。
洗脳させられている。blogテロ。政治圧力。「僕は朝日の愛読者で共産党に投票する左翼だが君の意見に反対」と言ってる人はスパイ。
でも、まず、「演繹すれば自分が間違っているという可能性が一番高い」ってところから始めた方が良いんじゃないでしょうか。
右も左も無く、丁寧に自分の意見を見直すところから始めるのが良いんじゃないですかね。
僕は常識とか良識とかという言葉を使わなくなってずいぶんになります。そうした言葉を使うとき、当社経験では100%、ごく狭いエリアのローカルルールでした。
なぜ常識とかという言葉を安易に使いたがるのか、この広い世界の星の数ほどの価値観のバリエーションに直接アクセスできるネットワーク環境の中では、怠惰に過ぎると思いますよ。
だからこそ、丁寧に説明をしていかなくては相手を説得できない。それに、そういう丁寧な説得を通じて、今まで見えてこなかった新たな価値観の切り口、または違う着地点が見えてくるというものでしょう。
相手の常識はおかしいぞ、と言う時、自分の持っている行動規範はこうだ、君との差はここにある、と示さないと、架空の常識の振りかざし合戦になるばかりです。そして泥仕合は続く。
こうした真摯な努力というものは、知力体力が必要ですので誰にでもお勧めできることではありませんが、僕はできる範囲でそう行動したいと思っています。

2 thoughts on “サイトの運営

  1. BBSを運営し、その存亡の危機を経験した人なんて、パソコン通信が普及して20年、インターネットが普及して10年経つといっても(”普及”って言うのも極めて限られた範囲でしかないと思うけど)、そういった経験を有している人は僅かで、その経験に基づく知見を有している人も僅か。そういう意味では、そうでない人の対応と相違が見出されるのも当然で、blog上での意見の相違によるトラブルについてのスキルには差があり、その対処が異なるのも仕方が無い。が、まぁ、何も無いところからは何も生まれない訳で、コメントを消しちまったら、その先には”理解”なんてものが生まれる余地がなくなってしまう訳で、それはもうコミュニケーションツールたり得ない事位は誰しも学んでるだろう、と。
    まぁ、どんな対処をするにせよ、本人にとって合目的であるのなら、それで良いんじゃないかな。賞賛されるも呆れられるも本人次第。主義主張を貫くために自縄自縛になるのも自由だし。
    個人的には、blog運営者なんてのは、舞台俳優であって、観客一人一人に個別対応するなんて無理だし、どんな客が来ようと合法なら追い返せないもんだと思ってるけど。

  2. うんみゅー。つまり、僕にはスキルがあるけれど、他の人はそうばっかりじゃない、ってこと?
    そりゃあまあ、多少はあるかもしれないけど、観察してればそれなりにわかるんじゃないかなあ。事例はいくらもあるわけだしさ。
    それにリアル社会で礼儀正しい人がNWで無礼ってことは少ないよ。つまりさ、礼を失しなければ燃え上がったりはしないんじゃないかなあ。
    第一「ITに強いぜ俺は」ってこの弁護士も自負してるし、老舗のHotWiredで連載してるわけだしさ。
    このくらいのことは体感的にわかってなくちゃイケナイことじゃないのか、とも思うわけ。
    ODENさんは「自分は観客でいい」って思ってその位置にいるわけでしょ。つまり自分のことはわかって自分の位置を選んでるわけじゃん。
    サイトを作ってる人も自分のことをわかって自分の位置を選ぶのが分別ってもんだと思う。
    うーん。すまん。俺、ちょっと分別、得意じゃない(笑)

ODEN にコメントする コメントをキャンセル

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください