Cats and Dogs

出張から帰ると悪い知らせが待っていた。
僕の友人が死んだと言う。
自殺だと。
僕は彼とはまだ会ったことが無い。
ネットで知り合って、毎日彼のblogを覗いていて、時々コメントを残していた間柄だ。
こういうのを世間じゃ「ネットを通した希薄な関係」みたいに言うんだろうな、クソ。
ばかやろう、何にもわかっちゃいねえ。
僕は彼のことが好きだった。一度も会ったことなんか無くたって、気が合う友達だった。
近々会おうと思っていた。ゆっくり酒を飲んでくだらないバカ話をして、もっと彼のことを聞こうと思っていた。「知らないから知ろうとした」わけじゃなくて「知ってるからもっと詳しく聞こうとした」んだ。
僕は彼のことが好きだと判ってくれていたと思う。
今度会おうよ、と声だってかけていた。
なんだか具合が悪そうな様子も気がついていた。でも、それもほんの一時のことだと思っていた。そのうち気が晴れることもあると思っていた。
チクショウ。
会えばよかった。
酒を飲んでケイタイの番号を交換して、時々愚にもつかない電話でもするんだ。
むさくるしい男同士で夜中に仕事の愚痴や、女の子の話やテレビ番組について話すんだ。
クソ。もう会えない。
僕は彼の顔も声も話し方も知らない。
もう知ることはできなくなってしまった。
クソ。僕のことは思い出さなかったかな。
僕が会いたいって言ってた事は思い出さなかったかな。
どうして待ってくれなかったんだろう。
待っていて欲しかった。