月夜の犬

僕はあまり犬が好きじゃない。
あの、何もかも主人の言うことをきくその姿が僕は苦手だ。
子供のころ飼っていた事があったが、飽きっぽい僕は散歩にもろくに連れて行かず、結局早死にさせてしまった。本当にかわいそうな事をした。
僕のように計画性がなくて、規則正しい生活を送るのが苦手な人間は犬なんか飼うものじゃないと思っている。
飼うなら猫がいい。
お互いのことを認めつつも、お互いの内面まで干渉しあわないでいられる関係がいい。
時々近くに寄って来て「調子はどう?」と尋ね、忙しそうにしていると「あ、そう」と気にもせずにまた自分の生活に戻っていく猫なら、気兼ねしないで済む。
犬の中でも座敷犬のような愛玩犬は、まるで肥大した人間のエゴをそのまま奇怪にデフォルメして体現していて、見てるだけでも虫唾が走る。服なぞを着せて散歩してるのを見ると踏みたくなる。以前、電車の中の広告で何種類もの犬に洋服を着せた写真がそこらじゅうに張られていて気分が悪くなり、広告主に殺意さえ覚えたものだ。
友人関係を壊すといけないのであまり無茶は言ってはいけないんだが。
だが、こんな僕でも犬もいいな、と思ったことがある。
ドーベルマンはいいと思う。
僕が85年式のGSX-R750に乗っていたころの話……

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